新型コロナウィルスの感染拡大やインボイス制度導入予定の影響もあり、従来のIT環境は激変しつつあります。特別な会社だけが行っていたテレワークも、部分的ではあるものの多くの会社で導入されるようになってきました。
それを後押ししているのが、IT導入補助金です。
この補助金活用で、IT化が難しいと言われていた業種やサービスに対しても、積極的に非対面、非接触で事業経営が行えるように業務の転換が図られるようになりました。
今回はIT導入補助金の申請採択率について解説します。採択率を知っていただいたうえで、この補助金によって、さらにビジネスのやり方をIT化し、さまざまな面で新時代に適したビジネスモデルの構築に役立てください。
令和元年度補正予算・令和3年度補正予算 「小規模事業者持続化補助金」
[公募要項・申請様式・Jグランツ申請情報にアクセスしたい方]
・商工会管轄地域で事業を営んでいる小規模事業者
https://www.shokokai.or.jp/jizokuka_r1h/index.html
・商工会議所の管轄地域で事業を営んでいる小規模事業者等
https://r3.jizokukahojokin.info/
IT導入補助金とは何?
まず簡単にIT導入補助金について解説します。
「IT導入補助金」とは経済産業省が監督し一般社団法人 サービスデザイン推進協議会が実施している補助金です。
具体的には、中小企業、小規模事業者を対象に、ITツールの導入を積極的に支援し、自社の弱みを克服し、業務の効率化や売上アップに資することを目的としている補助金です。
この補助金は2020年以降、コロナの影響もあり、特に感染抑止とポストコロナを見据えた対人接触の低減や非対面ビジネスモデルの構築に資するような「特別枠」が新たに創設されました。
この「特別枠」は2022年よりコロナ関連から、サイバー攻撃などを防ぐ「セキュリティ対策推進枠」と2023年10月から実施予定のインボイス制度に対応した会計ツール導入を補助する「デジタル化基盤導入枠」になりました。
- 中長期業の業務効率化、弱点の克服→従来型IT導入補助金
- 特に新型コロナウィルスのリスクを減らすビジネスモデル転換や非対面モデルの構築→特別枠(低感染リスク型ビジネス枠。2022年まで)
- サイバー攻撃などを防ぐシステム構築→セキュリティ対策推進枠
- インボイス制度を見据えた会計等システム構築補助→デジタル化基盤導入枠
という分け方がなされています。
IT導入補助金の採択率は
IT導入補助金2020年までの採択率は以下になります。
年 | 採択率 |
---|---|
2017年 | 約50% |
2018年 | 約100%(ほぼ全員採択) |
2019年 | 約33% |
2020年 | 約40% |
2020年は新型コロナウィルス感染拡大のため、臨時のスケジュールを組み、計10回募集をしました。例年以上に申請者が増え、補正予算等で補助金を拡充したものの、当初約50%あった採択率が後半大きく下がり20%前後となり、かなり厳しいものとなりました。
2020年については審査が厳しくなったのか、申請した事業者の質が悪化したのかは意見が分かれるところです。
2021年の採択率は以下になります。
A類型、B類型:通常枠
C類型、D類型:特別枠(2021年はコロナ関連)
A類型 | B類型 | C類型 | D類型 | 合計 | ||
---|---|---|---|---|---|---|
1次 | 申請数 | 2,373 | 92 | 3,249 | 797 | 6,511 |
交付決定数 | 1,317 | 48 | 1,908 | 444 | 3,717 | |
採択率 | 55.5% | 52.2% | 58.7% | 55.7% | 55.5% | |
2次 | 申請数 | 4,542 | 157 | 9,664 | 1,696 | 16,059 |
交付決定数 | 2,507 | 53 | 5,869 | 1,036 | 9,465 | |
採択率 | 55.2% | 33.8% | 60.7% | 61.1% | 52.7% | |
3次 | 申請数 | 2,840 | 83 | 7,622 | 1,273 | 11,818 |
交付決定数 | 1,648 | 36 | 4,656 | 782 | 7,122 | |
採択率 | 58.0% | 43.4% | 61.1% | 61.4% | 60.3% | |
4次 | 申請数 | 1,799 | 51 | 6,158 | 830 | 8,838 |
交付決定数 | 1,013 | 25 | 3,719 | 554 | 5,311 | |
採択率 | 56.3% | 49.0% | 60.4% | 66.7% | 60.1% | |
5次 | 申請数 | 1,808 | 41 | 6,074 | 877 | 8,800 |
交付決定数 | 1,042 | 13 | 3,595 | 560 | 5,210 | |
採択率 | 57.6% | 31.7% | 59.2% | 63.9% | 59.2% | |
2021 合計 |
申請数 | 13,362 | 424 | 32,767 | 5,473 | 52,026 |
交付決定数 | 7,527 | 175 | 19,747 | 3,376 | 30,825 | |
採択率 | 56.3% | 41.3% | 60.3% | 61.7% | 59.2% |
2022年は以下になります。
A類型 | B類型 | セキュリティ | デジタル | 合計 | ||
デジタル1次 | 申請数 | 650 | 650 | |||
交付決定数 | 566 | 566 | ||||
採択率 | 87.1% | 87.1% | ||||
通常A型、B型1次 デジタル2次 |
申請数 | 2,907 | 80 | 1,662 | 4,649 | |
交付決定数 | 1,615 | 33 | 1,467 | 3,115 | ||
採択率 | 55.6% | 41.3% | 88.3% | 67.0% | ||
デジタル3次 | 申請数 | 1,823 | 1,823 | |||
交付決定数 | 1,562 | 1,562 | ||||
採択率 | 85.7% | 85.7% | ||||
通常A型、B型2次 デジタル4次 |
申請数 | 3,344 | 103 | 2,131 | 5,578 | |
交付決定数 | 1,843 | 44 | 1,855 | 3,742 | ||
採択率 | 55.1% | 42.7% | 87.0% | 67.1% | ||
デジタル5次 | 申請数 | 1,712 | 1,712 | |||
交付決定数 | 1,422 | 1,422 | ||||
採択率 | 83.1% | 83.1% | ||||
通常A型、B型3次 デジタル6次 |
申請数 | 2,877 | 104 | 1,944 | 4,925 | |
交付決定数 | 1,415 | 43 | 1,601 | 3,059 | ||
採択率 | 49.2% | 41.3% | 82.4% | 62.1% | ||
デジタル7次 | 申請数 | 2,149 | 2,149 | |||
交付決定数 | 1,759 | 1,759 | ||||
採択率 | 81.9% | 81.9% | ||||
通常A型、B型4次 デジタル8次 |
申請数 | 3,347 | 107 | 3,075 | 6,529 | |
交付決定数 | 1,465 | 48 | 2,648 | 4,161 | ||
採択率 | 43.8% | 44.9% | 86.1% | 63.7% | ||
2022合計 | 申請数 | 12,475 | 394 | 8,812 | 21,681 | |
交付決定数 | 6,338 | 168 | 7,571 | 14,077 | ||
採択率 | 50.8% | 42.6% | 85.9% | 64.9% |
A類型、B類型→通常枠
セキュリティ対策推進枠→セキュリティ対策推進枠
デジタル→デジタル化基盤導入枠
2022年通常枠の採択率はおおむね50%前後
2022年については「セキュリティ対策推進枠」第1次募集が9月8日締め切り、10月6日交付決定のため、本稿執筆時(9月下旬)にはまだ発表されていません(ので空白です)。
通常枠の採択率はおおむね50%前後、今年できたデジタル化基盤導入は平均80%を超え90%に迫る採択率となっています。
補助金としては異例の高い採択率であり、インボイス制度関係のIT設備投資を考えている方は、まずデジタル化基盤導入枠を申請できないか、補助金マッチにご相談ください。
IT導入補助金の採択率を上げるには
IT導入補助金の採択率を上げるためには、事業計画をしっかり立てて、現実的なIT化の目標を掲げることが何よりも重要です。空絵事とも思われる高すぎる目標値は却って、補助上の実現性を危ういものにしてしまいます。
専門家であるコンサルタントや補助金申請代行業者などのアドバイスも受けながら、現実的でかつ生産性向上に寄与できる事業計画を立てましょう。
合わせて、事務局が示している「加点項目」も可能な限り満たしてください。
加点項目は採択率を上げるポイント!
1.導入するITツールとしてインボイス制度対応製品を選定していること
2.交付申請時点で「地域未来牽引企業」(※)に選定されており、地域未来牽引企業としての「目標」を経済産業省に提出していること
地域未来牽引企業
https://www.meti.go.jp/policy/sme_chiiki/chiiki_kenin_kigyou/index.html
3.加点となる申請類型で交付申請を行いかつ賃上げ目標を立てた
A類型の場合
- 事業計画期間において、給与支給総額を年率平均1.5%以上増加させる
- 事業計画期間において、事業場内最低賃金を地域の最低賃金+30円以上の水準にする
これらの場合に、審査の際に加点されプラス評価になります。
先進的な取り組みをしていて、なおかつ、IT化によって社員の給料、時給が上がる計画を立てることが大切だと判断されます。
IT導入補助金をより確実に通すためにはアップシフト補助金活用プロデューサーに相談を!
アップシフトにはIT導入補助金に詳しい専門家がいます。
IT導入支援事業者の選定についても的確にアドバイスしますのでご安心ください。2022年に始まったデジタル化基盤導入枠は、採択率80%超と補助金の中では非常に高くねらい目です。
それ以外の枠についても50%前後の採択率を少しでも向上できるよう、お手伝いいたします。
インボイス制度導入を1年後に控え、ITへの投資については積極的にサポートする意向が、デジタル化基盤導入枠の採択率からも見て取れます。
積極的にIT導入補助金を活用し、一気に事業のIT化を進展させてください。