2023
「先祖代々の技術を引き継ぎたいが後継者がいない」
「自分たちの代でこの事業を終わらせてしまうのはもったいない」
「事業を引き継ぎたいけどそのための資金がない」
「事業承継して新しいことをやる気はあるのに、お金がない人を何とかしたい」
事業承継、M&Aをしたいが、さまざまな要因でそれがかなわない場合、補助金を利用できます。今回紹介する「事業承継・引継ぎ補助金」はそのために非常に役に立つ補助金です。
事業承継・引継ぎ補助金の概要や申請方法などについて説明します。せっかくの素晴らしい技術やサービスをそのまま終わらせてしまうのはもったいないです。
令和4年度 当初予算 事業承継・引継ぎ補助金
事業承継・引継ぎ補助金の概要
まず「事業承継・引継ぎ補助金」の概要について説明します。2022年度は事業終了となりましたが、令和4年第二次補正予算に事業承継・引継ぎ補助金が含まれていますので、2023年も実施されます。
事業承継を取り巻く厳しい経営環境を知る
高齢化が進む日本社会ですが、日本の全企業中99.7%を占める中小企業(個人事業主を含む)は後継者不足に直面しています。
中小企業・小規模事業者・個人事業主は日本の産業を支えるために不可欠な存在です。しかし、2025年までに約250万円の中小企業経営者が70歳を超えるという推計もあります。
70歳は会社員ならば当然引退している年齢です。経営者は高齢になっても事業に従事していますが、これでは病気などで事業を続けられなくなる=即廃業となってしまいます。
約250万人いる70歳以上の高齢者のうち約半数(127万人)は「後継者未定」という非常に厳しい状況に置かれています。ここを何とかしないと、日本の伝統技術が一気に誰にも承継されず廃れてしまいます。
事業承継・引継ぎ補助金の概要
こうした後継者不足の現状を把握し、それを打開するために設けられたのが「事業承継・引継ぎ補助金」です。事業承継・引継ぎ補助金は、中小企業庁が主体となっている補助金で、旧来の「事業承継補助金」および「経営資源引継ぎ補助金」を統一し、新たに制度として設けられたものです。
大きく分けて、事業承継や引継ぎのため直接的にかかる費用を負担する「経営革新型」が3類型、そして、事業承継の際に専門家に相談する費用を補助する「専門家活用型」が2類型、廃業や再チャレンジを支援する「廃業・再チャレンジ型」が1類型あります。
事業承継・引継ぎ補助金「経営革新型」3類型
事業承継やM&Aにかかる直接的な費用を補助する類型です、大きく分けると以下の3つになります。
創業支援型
廃業を予定していた事業者から経営資源を引き継ぎ、新規に創業した場合に補助があります。引き継いだ事業を経営革新するための取り組みも必要になります。
経営者交代型
親族内承継も含めて、代表者から経営資源を引き継ぎ、経営革新を行った事業者への補助になります。
M&A型
M&A(株式譲渡、事業譲渡など)によって経営資源を引き継ぎ、経営革新を行った事業者への補助になります。経営者交代型との違いは、自分が新しい経営者ポストにそのまま座るのか、自分の会社にM&A先の(事業承継する会社)を吸収、合併するかによります。
こちらの方がよりテクニカルで、戦略的な手法ともいえるでしょう。
専門家活用型2類型
事業引継ぎ時の専門家の活用費用の補助金です・専門家を活用する際には、買い手(事業承継する、引継ぐ)支援と売り手(事業承継させる、引き継がせる)支援に補助する2類型があります。
【Ⅰ型】買い手支援型
現在事業を行っていて、経営資源の引継ぎを行いたい、事業承継させたい予定の中小企業者等で以下の条件を満たす場合に専門家費用を補助します。
- 事業再編・事業統合等に伴い経営資源を譲り受けた後に、シナジーを活かした経営革新等を行うことが見込まれること
- 事業再編・事業統合等に伴い経営資源を譲り受けた後に、地域の雇用をはじめ、地域経済全体を牽引する事業を行うことが見込まれること
単に事業を引き継ぐだけではダメで、その結果として相乗効果(シナジー)が見込めることが大切になります。
【Ⅱ型】売り手支援型
事業を引き継がせたい事業者向けで、以下の要件を満たし専門家を活用した場合、費用が補助されます。
- 地域の雇用をはじめ、地域経済全体を牽引する事業等を行っており、事業再編・事業統合により、これらが第三者により継続されることが見込まれること。
要件については、買い手ほどは厳しくありません。とにかく、廃業せずに優れた技術を紹介させたい意気込みを氷解します。
廃業・再チャレンジ事業
M&Aに成功する事業者だけではありません。残念ながら失敗し廃業を決断する方、あるいは引継ぎを諦めいったん廃業し、自力再建を決断する方を応援する類型です。
上記の経営革新事業、専門家活用事業とあわせて申請する「併用申請」と、廃業・再チャレンジ事業単独で申請する「再チャレンジ申請」があります。
併用申請の場合、経営革新事業、専門家活用事業として申請します。再チャレンジ申請は、単独で申請します。
本類型は申請者がとても少ないのですが、廃業も1つの決断です。ぜひ頭に入れておいてください。
申請条件(申請できる事業者)
事業承継・引継ぎ補助金を利用できる事業者は以下に該当する中小企業と個人事業主です。
業種分類 | 資本金の額又は出資の総額 | 常勤従業員数 |
製造業その他 | 3億円以下 | 300人以下 |
卸売業 | 1億円以下 | 100人以下 |
小売業 | 5千万円以下 | 50人以下 |
サービス業 | 5千万円以下 | 100人以下 |
この条件を満たす事業者で、法令順守等に問題がなく、適切に資料提出等が可能な場合、事業承継・引継ぎ補助金の申請が可能です。
事業承継・引継ぎ補助金受給に必要な取り組み
それぞれの類型によって、申請条件、要件は異なりますが、事業承継・引継ぎ補助金の受給に際しては以下の事柄の実施が求められるので注意してください。
- 新商品の開発または生産
- 新しいサービスの開発または提供
- 商品の新たな生産または販売の方式の導入
- サービスの新たな提供の方式の導入
- 事業転換による新分野への進出
- 上記以外の、その他の新たな事業活動による販路拡大や新市場開拓、生産性向上等、事業の活性化につながる取り組み等
単に事業承継するだけではダメで、これらの取り組みをして、経営革新や新しい市場開拓をすることで、相乗効果を生む出すことになります。そうした通常の事業承継以上のことを行うことで初めて補助金が出るとご認識ください。
事業承継・引継ぎ補助金の申請方法
事業承継・引継ぎ補助金の申請方法について解説します。
事前準備
事前に以下の準備をお願いします。
- 補助対象事業、類型の確認
- 認定経営革新等支援機関へ相談
- gBizIDプライムの取得
gBizIDプライムは事業承継・引継ぎ補助金以外の公的補助金の申請でも使うものです。すでに取得している場合はそのアカウントを使っていただいて構いません。これをもとに「jGrants」というシステムから申請します。
認定経営革新等支援機関という税理士や公認会計士、商工会議所などの機関に事業承継・引継ぎ補助金を申請したい旨を相談します。これらの機関で営業実態の確認等も合わせて行います。
補助金申請
必要書類を揃えて交付申請します。書類が多いので、ここでは一覧のみ記します。類型によってさらに必要書類が異なるので、詳しくはリンクを参照してください。
「必要書類申請チェックリスト」参照
https://jsh.go.jp/r4/materials/
- 補助金交付申請書(jGrantsにて申請)
- 認定経営革新等支援機関による確認書
- 交付申請日以前3 カ月以内に発行された住民票(法人の場合は代表の住民票)
- 交付申請日以前3 カ月以内に発行された履歴事項全部証明書(法人の場合必須)
- 税務署受付印のある直近の確定申告書
- 直近の決算書(貸借対照表、損益計算書)
- 税務署受付印のある直近の確定申告書B(第一表、第二表)と所得税青色申告決算書
- 定款(特定非営利活動法人のみ必須)
- 税務署受付印のある開業届
- 事業再編・事業統合のスキームがわかる模式図(書式自由)
- 承継者又は承継者たる法人の代表の書類
その他、いくつかの「加点材料」となる書類も提出できます。これらは任意ですが、あると審査に通りやすくなります。
これらをjGrantsのシステムから申請して結果を待ちます。
事業承継・引継ぎ補助金についてのお問い合わせは補助金活用プロデューサーに!
事業承継・引継ぎ補助金はほかの補助金(IT導入補助金やものづくり補助金など)と比較して、後ろ向きというイメージがありますが、リタリア目的だけではなく、事業をリストラしてそれまでの遺産を生かしてくれる事業者へ引継ぎ、身軽な状態にして事業の「リスタート」を切ることを後押しします。
逆に優れたノウハウを持つ事業者を引き継いで、自社の事業をリニューアルしたいという引継ぎ希望者も応援します。
事業承継・引継ぎ補助金は優れたスキル、ノウハウを後世に残し、かつ新しい道を開拓するのに役立つ補助金です。買い手、売り手ともに応援します。