新規開業、創業する際に、自己資金だけでは足りず、創業融資の借入をするケースがあります。しかし、いわゆる「創業融資」は、創業時の事業計画書および収益の見通しによって審査が行われ、実際に創業後、計画書通りの収益が上がらない場合、返済に困ることになります。
返済までの猶予期間「据え置き期間」がありますが、軌道に乗るかどうかはわからず、返済が重くのしかかります。
借入ではなく、返済不要の公的資金である「補助金」「助成金」を受給できれば、経営上非常に助かります。今回は個人事業主も受給できる東京都の「創業助成金」(創業助成制度)について多角的に解説いたします。
東京都創業助成事業(東京都創業助成金)
https://startup-station.jp/m2/services/sogyokassei/
東京都の創業助成金とは何?
東京都の「創業助成金」とは、正式名称を「創業助成事業」と言う、都及び東京都中小企業振興公社が運営する助成金事業です。都内での開業率を積極的にサポートし、ゆくゆくは都内に税金を納めてくれる事業者に成長することを期待し、そのスタートアップに際して、積極的に助成するものです。
条件を満たす創業前、あるいは創業後の個人(事業主)または、法人に対して、特定の経費の支出に対して、後日助成金を支給します。
「助成金」とありますが、厚生労働省の助成金のように、基準を満たせば原則的に受給できる制度ではなく、「補助金」のように審査があり、採択率もそれほど高くないため、事前の準備が必要になります。実質補助金と同じものだと考えてください。
東京都創業助成金の募集期間
創業助成金の募集については、東京都中小企業振興公社のHPに募集要項が載ります。
https://startup-station.jp/m2/services/sogyokassei/
ここ数年は春と秋の2回募集、採択がありますが、必ず行われるということではないので注意してください。
最新の募集は
令和4年度第2回 創業助成事業
申請期間:令和4年10月3日(月)~令和4年10月12日(水)
になります。募集期間(申請期間)が約10日しかしかないので注意が必要です。ただし、募集の1か月くらい前に予告があるので、そこから書類などを準備しておけば十分間に合います。
通年募集ではなく募集期間が短い、ということを意識しておいてください。
東京都の創業助成金の対象になる法人・個人事業主
東京都創業助成金には一定の要件を満たした法人、個人事業主が応募できます。
ただし、以下の2つの要件を満たす必要があります。
要件1 設立要件
東京都の創業助成金は法人と個人事業主で申請できる条件がやや異なります。
法人 | 個人事業主 | |
要件 | 法人設立登記をしている | 開業前 税務署に開業届を出している |
開業前 | 不可 | 可能 |
開業後 | 5年以内 | 5年以内 |
都内要件 | 本店登記が都内 実質的な営業している本店が都内にある |
納税地が都内 実質的な営業をしている本店が都内(予定) |
法人の場合は、法務局に法人設立登記を行ってから5年以内(創業後)であるのが要件で、それ以前、創業前の申請はできません。特定非営利活動法人についても申請可能です。
一方、個人事業主の場合は税務署に開業届を出してから5年以内、および創業前(開業届を出す前)でも申請ができます。個人事業主の方が利用しやすい制度となっています。
東京都機関の創業サポート実績
上の条件を満たす法人、個人事業主が誰でも応募できるわけではなく、それを満たし、さらに、東京都関連の創業サポートを受けた実績が必要になります。本助成金申請前に、以下のいずれかのサポートを受けてください。
助成金申請のために機械的にサポートを受けるのではなく、本当にためになるので、積極的な活用をよろしくお願いいたします。
運営主体 | サポート概要 | サポートの内容 |
---|---|---|
東京都中小企業振興公社 | 事業計画作成 | TOKYO創業ステーション「プランコンサルティング」による事業計画書策定支援 |
事業計画作成 | 「多摩ものづくり創業プログラム」を受講後、「プランコンサルティング」による事業計画書策定支援 | |
事業評価 | 「事業可能性評価事業」において「事業の可能性あり」 | |
事業計画作成 | 「進め! 若手商人育成事業」における「商店街開業プログラム(商店街起業促進サポート)」の受講 | |
東京都中小企業振興公社 東京都 |
施設入居 | 東京都・公社が設置した創業支援施設に入居している、または以前に入居していた |
東京都 | 施設入居 | 東京都インキュベーション施設運営計画認定事業の認定を受けた認定インキュベーション施設に入居 |
東京都 市区町村 中小企業基盤整備機構 金融機関 |
施設入居 | 独立行政法人中小企業基盤整備機構や自治体、金融機関等が設置した創業施設に入居(現在および過去) |
東京都 | 創業支援 | 創薬・医療系ベンチャー育成支援プログラムの選抜プログラムの受講修了 |
コンテストで結果 | 「TOKYO STARTUP GATEWAY」において、過去3か年度の期間内にセミファイナリスト | |
創業支援 | 「女性ベンチャー成長促進事業(APT Women)」において、国内プログラム(アクセラレーションプログラム)の受講 | |
融資実績 | 「女性・若者・シニア創業サポート事業」の制度融資を受けた | |
融資実績 | 東京都中小企業制度融資(創業融資)を利用 | |
資金調達 | 東京都が出資するベンチャー企業向けファンドからの出資 | |
市区町村 | 融資実績 | 都内区市町村が実施する中小企業制度融資(創業融資)の利用 |
創業支援 | 産業競争力強化法に規定する認定特定創業支援事業を受ける | |
日本政策金融公庫 | 融資実績 | 日本政策金融機関の資本性劣後ローン(創業)を利用 |
民間企業 (デロイト トーマツ ベンチャーサポート株式会社) |
創業支援 | 青山スタートアップアクセラレーションセンターのアクセラレーションプログラムを受講 |
東京商工会議所 東京都商工会連合会 中小企業基盤整備機構 東京信用保証協会 |
創業支援 | 認定特定創業支援事業や創業塾等の受講やサポート |
詳しくは「TOKYO創業ステーション|申請要件」
https://startup-station.jp/m2/services/sogyokassei/youken/
を参照してください。
なかなかハードルが高そうに思えますが、後者が行う各種創業プログラムの受講や、商工会議所などの「創業塾」への参加が比較的誰でもできて、簡単です。まず、後者や商工会議所に創業相談に行くところから始めてみましょう。
助成金額はどのくらい?
東京都創業助成金(助成事業)の金額は下記になります。
助成金額 |
---|
下限100万円~上限300万円 |
助成対象 |
助成対象と認められる経費の2/3以内 |
助成期間 |
交付決定日から6か月以上2年以下、交付決定日以前に支払ったものは対象外 |
どの経費に助成金が認められるのかは、次回記事で詳しく紹介します。
東京都の創業助成金のメリットとデメリット
創業助成金は返済不要なのでメリットだけと思われがちですが、デメリットもあります。両方を知ることで、申請の可否やタイミングを判断します。
東京都創業助成金のメリット
まず、創業助成金のメリットを挙げます。
300万円まで借入ではなく支給される
資金使途について制限はありますが、最大300万円まで創業、スタートアップにかかる費用が支給されるというのは非常に大きなメリットです。
通常は自己資金や借入によって充当すべきお金を、タダでもらえるわけですから、経営を大きく安定させられます。
中小企業振興公社による継続的なサポートが受けられる
助成金支給後、5年間の報告義務がありますが、ただ一方的にこちらが申告するだけではなく、振興公社から専門家のアドバイスを受けられます。商工会議所の「指導金融」に近いサービスを受けられるのはメリットです。
東京都の創業助成金のデメリット
一方助成金のデメリットについても残念ながらゼロではありません。
手続きや事後報告などが面倒
これは実際に助成金が振り込まれるまで、振り込まれてからの審査や監査、手続きの多さを見ればわかります(詳細は次回記事)。これだけのことを行って、助成金が100万円くらいならば、素直に銀行から融資を受けた方が精神的にも楽かもしれません。
助成金は後払いである
融資と助成金(や補助金)の大きな違いです。助成金は実際に事業が終わり、報告が済み、公社のチェックが終わらないと振り込みがありません。したがって、事業実施の際は、自分でその資金を一時的に用意しなければなりません。自己資金はどうしても必要になります。
助成金にはもらえる期間がある
助成金対象事業に対して永遠に助成金が出るわけではありません。たとえ家賃を申請して助成金をもらったとしても、助成対象期間が終われば自腹を切らなければなりません。助成金によってうまくスタートダッシュできれば良いのですが、それがかなわなかった場合、人件費や賃料が大きく経営にのしかかってしまいます。
返済義務なく創業時の資金に充当できる東京都創業助成金は大いに魅力!
東京都創業助成金は対象が幅広く、特に個人事業主の方は開業前でも申請できます。どのような事業の際にも先立つものは必要です。
東京都創業助成金は、その間口が広く、かつ東京都中小企業振興公社や商工会議所、金融機関などのサポートを受けで進めます。
そのため、開業、創業について自然に理解できます。この各機関のサポート事業は助成金目的でなくても非常に役立つため、ぜひ活用してみてください。
東京都内で開業を考えている方は、まず東京都中小企業振興公社の窓口「TOKYO創業ステーション」まで行って話をしてみましょう。
東京都創業助成事業(東京都創業助成金)
https://startup-station.jp/m2/services/sogyokassei/
手続きの流れ
全体スケジュール
補助対象費用
採択率
必要書類
は次回記事に回します。